『#真相をお話しします』 気軽に読める本格ミステリ。騙される快感を味わいたいあなたにオススメ!【夏休み 読書シリーズ】
ミステリ界の超新星が仕掛ける、罠、罠、罠、罠、罠。
家庭教師の仲介営業マンとしてしのぎを削る大学生。娘のパパ活を案じながらも、マッチングアプリに勤しむ中年男。不妊に悩んだ末、精子提供を始めた夫婦。リモート飲み会に興じる学生時代の腐れ縁。人気 Youtuberを夢見る、島育ちの小学生四人組。微笑ましくて、愛おしくて、ときに愚かしい。令和を生きる私たちのニュー・ノーマル。
———–本当に?
読みながら覚えるかすかな違和感と確かな胸騒ぎ。それでも、あなたの予想は必ず裏切られる!
緻密で大胆な構成と容赦ない「どんでん返し」の波状攻撃に瞠目せよ。
– 本書の帯より
外出先でふと立ち寄った本屋の店先の棚に並んでいた本書。簡単に読める小説でもと思っていた私は、「騙されて驚くためにミステリを読む」「凄い間違い探しに手を出してしまった!」「絶対に読者を騙してやろうという凄まじい執念」という言葉が並ぶ帯に惹かれて本書に手を出してしまった。
結果としてその選択は間違っていなかった。そしてこの帯コメントに偽りは全くなかった。
本作は全5話の短編が詰まったミステリ小説。短編のタイトルは「惨者面談」「ヤリモク」「パンドラ」「三角奸計」「#拡散希望」。それぞれ家庭教師のアルバイト、マッチングアプリ、不妊治療と精子提供、Zoom飲み、Youtuberを扱ったストーリーとなっている。直近数年で盛り上がったトピックを盛り込んでおり、非常に読みやすい。ミステリにありがちな複雑な設定もないし、各ストーリーで覚えられないほどの登場人物が出てくることもない。文章もスルスルと読み進められるくらい平易に書かれている。
読みやすさに任せてスルスルとページを進めていくと、だんだん話が物騒な方向に進んでいくことになる。どんな展開になるのだろうと続きが気になって仕方がない。そして待ち受ける衝撃のラスト。断言するが、あなたは必ず騙される。
もしもあなたが作者の作った謎に挑戦しようというのであれば、作中で描かれている細かい描写を見落としてはならない。そして少しでも違和感を覚えるところがあれば注意すべき。必ずそのお話の謎に関わってくるから。
もしあなたが賢明な読者であれば「この話のオチは読めた」といういうくらいはっきりとラストを予想できるかもしれない。ただし、それは作者の罠であり、あなたは誘導されているだけかもしれないのでご注意を。
オチがわかってから改めて各話を見直すと、さりげなくヒントが散りばめられていることに気づくはず。なぜこのとき気がつかなかったのだろうと悔しい思いをするのもこの本を楽しむ要素のひとつであることは間違いない。
ミステリの原則のひとつに「読者に明かしていない手がかりによって事件を解決してはならない」というものがある。この本は忠実にこの原則を守っていると言える。その上でこちらの予想を超えてくるラストを用意しているのだから素晴らしいとしか言いようがない。
この夏、手軽に「騙される快感」を味わいたいあなたに本書は最高のエンタメを提供してくれることになるのは間違いない。